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2024/11/22 02:26 |
花筏(三遊亭圓生・桂枝雀)
今朝の立川志の輔「落語でデート」演目は「花筏」でした。
圓生師匠の名演。
この番組、昔の名人上手の、今は聞くことができない演目が聞けるのがいいところ。

さて、「花筏」ってどんな話?

江戸時代の話です。
今と同じで相撲取りは本場所が終わると勧進元に呼ばれて地方に巡業に出ていました。

「一年を十日で過ごすよい男」

当時の相撲は国技ではないにしても神事でしたので、
相撲を呼ぶって事は、土地の神様を鎮護する意味もあったらしいね。
四股を踏むのは穢れや邪気を払い、五穀豊穣や無病息災をこの土地にもたらす行為なんです。だから相撲取りは神様に神託をもらった特別な人、力士に抱かれた赤ちゃんは健康に育つといわれ、手形は縁起物とされるのです。いや、受け売りですけどね。
(わかるかな~?モンゴルから来た横綱よ)

さて、当時の相撲の番付の最上位は大関です。
横綱ってのは吉田司家が免許を与えた大関に対する名誉称号に過ぎなかったんですね。
だから、強くても時の運、お抱えの大名たちの力関係などで横綱になれなかった大関はいっぱいいたそうです。
有名なところでは雷電為右ェ門は大関止まりです。

おっと、花筏の話でしたな。

さて、江戸で名代(なだい)の大関である花筏が、
病気になって寝込んでしまいました。
ところが、実は花筏が所属する部屋が水戸の大浜に巡業に行くことが既に決まっており、先方の勧進元も花筏を是非連れてきてほしいとのことだったので困ってしまった。

困ってしまった花筏の師匠である親方が、近所の提灯屋の職人が花筏によく似ていることに目をつけて巡業に身代わりなってでくれと頼むところから始まるんですね。
提灯屋さん、最初はいやで断るものの、親方が提示した
「相撲は取らず、うまいものを食べて、酒飲んで、日当二分」という誘惑に乗せられ結局は大関の身代わりに水戸まで行くことにしたって話。
(上方落語だと、花筏は大阪相撲の大関と言う事になります。行き先も水戸ではなく高砂への巡業になります。)

さて、提灯屋さん、ニセモノとばれることなく
順調に興業もすすみ、
明日は千秋楽で江戸へ帰るという日になって、困ったことになった。
先方から一度だけでいいから大関の花筏に相撲を取ってもらいたいと言ってきたのだ。
親方も勧進元から口説かれて、なんとか仲間内の八百長でかたづけようと思案したのだが、

先方からはそれなら土地の素人相撲の千鳥ヶ浜と結びの一番をとってほしいと頼み込まれ、親方も渋々承知してしまった。

さあ、大変なのは提灯屋。

千鳥ヶ浜は、連日、本場の相撲取りを相手に連勝している地元の素人力士だ。プロでも勝てないのに酒太りの提灯屋なんか殺されてしまうかも知れない。
逃げる算段を考える提灯屋に親方が策を与える。
立合いで張り手を打つと見せかけて転べば、提灯屋もけがをせず、
花筏にも、病気のためという評判で疵がつかない。千鳥ヶ浜も勝つことで、地元の人も喜ぶ、これで三方うまく収まるだろうと言う事。
了解した提灯屋夜中にドシーンドシーンと転ぶ稽古。
一方の千鳥ヶ浜、夢にまで見た大関と相撲を取りたい。
しかし、両親は止める。なぜかと言うと、明日の相撲はプロを相手に連勝している千鳥ヶ浜への遺恨相撲になる。
最後に強い大関が出てきて調子に乗った素人相手に遺恨を晴らしてやろうという魂胆に違いないというものだ。
相撲をとったら勘当するという親の言葉に明日は出ないで見るだけにすると誓う千鳥ヶ浜です。

(噺ではこんな面倒くさいことはもちろん言いませんよ。「遺恨相撲になる」と一言です。上方落語では『一番憎い千鳥が浜、土俵の上で叩き殺して溜飲下げてシュ~ッと大阪へいのっちゅうので、一番強い花筏が出て来たんじゃ。』というセリフになります)

さて、翌日は千秋楽、
提灯屋、その気もないのに生まれて初めての相撲をとることになった。
千鳥ヶ浜も、その気がなかったのに周囲にはやし立てられ土俵に上がってしまった。
いざ、仕切りで相手の目を見てしまった提灯屋、
相手の物凄い闘志溢れる眼光に当てられすっかり金縛り、動けなくなってしまった。

「こりゃ、転ぶ前に投げ殺されてしまいそうだ、オレはここで死んでしまうのか」

思わず涙を流して念仏を唱える「南無阿弥陀仏」

千鳥ヶ浜、驚いた。

「なんで、大関は泣いてるんだ?…あ、こりゃあ、やっぱり遺恨相撲だ、親の言いつけを破った罰だ。オレはここで殺される」
と、涙を流し始める。

困ったのは行司、息が合うはずがない
思わず軍配をひいた。

「ハッケヨイ!」

提灯屋、転ぶこともできず夢中になって手を出して突いた。
千鳥ヶ浜は出遅れてひっくりかえってしまった!

軍配は「花筏~!」
会場大歓声です。
「今の相撲は見事な張りだね。大関の張り手はうまいもんだ」

うまいわけです。何せ商売が提灯屋ですから

長い引用だったね。
この噺、アタシはテープで先代の円歌と桂枝雀で聴いてますが、
上方と江戸の作品の作りの違いはあるものの、
笑いに関しては上方の方が数段面白い。
演じているのが枝雀だからかも知れないが。

提灯屋の描写、相撲風景、花筏が相撲をとらなければいけなくなった理由も、東京は「地元に頼まれたから」だけですが、上方は「宿の亭主が勧進元に偽者の行状を報告する。『花筏関、相撲の取れん病人やそぉでおますけど、毎日、飯三升に酒五升呑まはります。あんな達者な病人見たことない』おまけに宿の女御衆に夜這いをかけてしまうに至って、そんな元気なら相撲が取れん事はなかろう」ともって行く。

オチも「『見たか!花筏、強いなぁ~。千鳥が浜、何じゃかんじゃ言ぅてもやっぱりあきゃせんわい、素人じゃわい。花筏がひとつバ~ンと張っただけで飛んでしまいよった。花筏は張るのがうまいなぁ~!』うまいはずです。提灯屋の職人でございます。」と、スッキリとサゲる。

ひとつのテキストを大勢で寄ってたかって(言い過ぎか)磨いたり加えたり削ったりして作り上げるのが落語という作品と言う事を考えると、
この噺は比べて聴くともっと興味深いと思います。

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2007/11/17 18:15 | Comments(0) | TrackBack() | 落語

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