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2024/04/20 15:00 |
茶の湯は風流(三遊亭金馬、桂文朝)
根岸の里のわび住い…

落語界で「根岸」と言えば故林家三平さんを指します。
(いずれ、これも「先代の…」という枕詞が付くんだね。時代の流れを感じますワ。)
ま、落語の中で「根岸」とくると、店を跡取りに任せたご隠居さんか、
店の大旦那の妾(愛人)がいるところというのが相場ですな。
今の鶯谷駅のあたりになる根岸は、下町の別荘地帯だったそうです。

妾さんは黒板塀に囲まれた家にばあやと狆(ちん)といっしょに住んでいるが、ご隠居さんは身の回りの世話をする小僧ひとりを付けて住んでいる。
小僧とくればなぜか定吉。
定吉と言えば毎日香…いや、そんな噺ではございません。

えー、息子に身代を譲り、丁稚小僧の定吉を連れて長屋の付いた一軒家に隠居した旦那。
毎日退屈なんでぶらぶらしていたら、
周りが琴やら盆栽やら生花やら風流な方ばかりなので、自分も何か風流なことをやりたくなった。
丁度隠居所には茶道具があったので茶の湯をやろうと決めた。
ところが、茶の湯を習えばいいものを、意地っ張りな隠居さんは「茶の湯を知らない」と言えない。

定吉の前で口からでまかせに「忘れた」と言ったものの、
「どこを忘れましたか?」と問われて困る。
茶碗に何か青い粉(抹茶)を入れてジャブジャブかき混ぜてブクブク泡が出るものとしかわからない。
そこで記憶をたどるふりをして懸命に考える。
わかるわけがない。知らないんだから。

定吉が青黄粉が青いと言えば「そうだった。青黄粉だ」と…おいおい。
定吉、言われたとおり青黄粉を買って帰ってくるが、
いくらかき回しても泡なんか出るはずがない。
何を入れれば泡立つのか?

定吉「椋の皮なんかどうでしょう?」
ご隠居「そうだ定吉、椋の皮と教わった。」
金馬さんの噺では、この小僧と隠居さんのやりとりが面白い。

椋の皮とは洗剤として乾物屋で売っていたくらいだから、
かき混ぜたら泡は出るだろうね。
水でも泡がブクブク出るんだから。
泡をふうふう飛ばしてからでないと飲む事ができない。
その上、渋くてまずくて飲めるもんじゃない。
青黄粉だけだったら、まずくてもおなかは壊さなかっただろうけど、

これを2人で風流だ風流だって飲んでたんだから、
おなかが下って仕方がない。
「定吉~、おむつは乾いたか?」と情けなく声を出す隠居さん。

隠居は夜通し16度もトイレに通ったとこぼす。
定吉は一回だ。
さすが若いなと感心すると、
「一回入ったきり出られなかった。」(笑)

「しかし、こう、下っ腹に力が入らない、体がふわ~っとして…風流だな。」
この「風流だな」という言葉がなんともおかしい。

この後、孫店の豆腐屋、手習いの師匠、頭を呼びつけ、
強制的に茶の湯を強請する。

これはマズイ。しかし、口直しにかぶりついた羊羹は旨い。
隠居は近所の人まで茶の湯でもてなした。茶は不味いが羊羹は美味いぞと、そのうち羊羹泥棒が始まった。
これえはたまらないと、今度は菓子を手作りする。

まず、皮をむいたサツマイモを蒸かしてスリコギであたり、
蜜を混ぜて、型には黒い灯し油を付けて型抜きし、
「利休饅頭」して客に出した。
つやがあって外見は旨そうだが、これはマズイ!
客は激減する。

そんなところに飛んで火に入る夏の虫…
昔のお客がやって来て「何も知らないので茶を教えてほしい」と所望があった。
「何も知らない?ではどうぞ」と、いつもより多めの青黄粉と椋の皮を入れて出した。

お客さん知らずに『お茶?』を口に含むと、飲めるものではない。
あわてて、『利休饅頭』をふたっつも口に入れたがこれがまたマズイ。

饅頭を袂に入れたが、やがて黒い油がにじみ出してくる。
我慢が出来ずに「お手洗いを拝借したい」と言って席を立って逃げ出した。
このベタベタしたものを捨てるところは無いか?
探したてはみたが、庭は掃き清められて捨てられない。
ふと前を見ると垣根の向こうに畑があった。
ここなら良いだろうと饅頭を投げると、それが畑仕事をしているお百姓さんの顔に当たった。
 お百姓さん怒ってそれを取り上げると…「また、茶の湯やってるだな」

これがオチ。みんな畑に捨てていたというわけ。

この噺、たぶん先代の小さん師匠、もちろん、テープで金馬さん、後はラジオで文朝師匠の噺も聴きました。
軽く、ある種の爽やかさを感じさせる芸風の人の方が面白い。
定吉が生意気に聞こえてもいけないし、ご隠居の知ったかぶりも度を越すと嫌味になる。感情移入がしにくくなる。

その点で金馬さんの芸は平易で最高である。
ラジオで聴いた文朝さんの定吉は金馬さんのそれよりより可愛かった。
今「茶の湯」の名手は誰になるだろう?

小朝さんかなあ?

頑固で可愛いご隠居、少し生意気でこまっしゃくれた小僧の定吉、3軒長屋の気のいい住人、そしてオチに登場するお百姓。

春風のような芸風の噺家さんがこの噺をやれば、
嫌味もなくクスリと笑えるかなあと思うしだいです。
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2009/01/16 03:03 | Comments(0) | TrackBack() | 落語
飄々として~柳家小三治
御慶!

落語好きならわかってくれるとは思うんだけど、
正月と言えば初席の寄席。
まだ改装前の池袋演芸場で、志ん馬さん(故人)が高座に上がるなり、
「この池袋演芸場で『お膝送りを願います』なんて言葉を聞くなんて、戦後以来なかった事で…」とマクラを振れば、笑いが取れるような時期だった。
トリはこれも故人の蝶花楼馬楽師匠。
「品川心中」をボソボソと語ってたなぁ。
で、今回は馬楽さんじゃなくて、小三治さんの事を話したいの。
あの師匠は、よーく知ってるんだけど、
よく考えたらあの人の噺、意外と聴いてない。

今、このブログ書いている時間は、
NHKで談志家元の特集を朝までやってる。
同じ小さん(先代)の弟子なんだけど、
談志さんと小三治さんは全く違うね。
己が魂をかけて古典にぶつかり取り組んで、
ついには自分が落語そのものになってしまった怪物のような談志家元に対して、小三治師匠はいつも肩の力をひょいと抜いて飄々と語っている。
談志家元の噺には博学も哲学も血も泪も汗もはっきり見えてくる。
「オレの噺で笑えねえのは、常識に縛られているお前が甘いんだ。」と思わせるような気迫がある。
小三治師匠の噺は聴いてて、クスっと笑わせる「おかしみ」と破綻のない安心をくれる。でも軽く演じているようでいて着物の下にはびっしょりと汗をかいている。

テレビのドキュメントで師匠は言ってた。
「こっちが笑わせるんじゃないんだね。(お客が)笑っちゃうんだ。」
食事毎に片手の平にいっぱいのクスリを飲んで
「これがアタシの食事だよ。」と笑ってた。
リューマチを患ってる師匠は、クスリのために体が弱く、
ちょっと風邪を引いても命が危ないくらいなんだそうな。

「落語新時代」という本の中で、著者(八木忠栄氏)のインタビューで祖師匠は言ってる。
自分はリアルであるけどリアルそうに見える『脱リアル』を目指す。それは「脱自分」でもある。
「私の場合、落語をやるって事はまず自分を否定してみないと始まらなかった。オレは落語には向いてなかった。(後略)」

これくらい自分をネガティブに捕らえ、悩み、苦しんだ末に今の境地に至ったのかね。
「笑わせる」わけでもなく、「笑ってもらう」わけでもなく、
「笑われる」わけでもなく、ただ「笑っちゃう」

アタシャ、小三治さんの噺で聴いたのは、「小言幸平衛」「三方一両損」「死神」の3つだが、恐らくもっと多く聴いてるはず。
当時はものすごく面白いわけではないが、確かに笑っちゃう。

下手したら、マクラもふらずにぷいっと噺に入り、瞬時に落語の人になってしまう。談志家元が、気分によって時に極彩色の、時に一筆書きの噺をするのに対して、小三治師匠は水彩画のような、でも奥行きの深い噺を聞かせてくれる…これは全てイメージなんですけど、わかりますかね?

それとも正月の酒を飲みすぎたせいかしらん。

2009/01/03 01:14 | Comments(0) | TrackBack() | 落語
桂三枝師匠について
ZZZ…んっ?
あーらら、もう12月じゃあござんせんか?
そういえばアタシが住む埼玉県の某所~ってほとんどみんな知ってるんだけど、来年3月に立川談志・桂三枝の二人会があるんですよ。

いや~、楽しみですね。

鬼が笑わぬようにと願うばかり。

しかし、家元、3月まで体調くずさないようにして欲しいなあ。

この二人の話とて、予想するのも楽しみです。

そんな流れで桂三枝師匠
いわずと知れた大阪落語会の頂点に立つ方ですね。
そして創作落語の大看板です。

創作落語ってのは…まあ、新作落語ですよね。
よーするに。
三遊亭円丈師匠なら実験落語ってやつだ。

新作ってのは現在古典と区別するのが難しくなってます。
東京で言うと、柳家金語楼師匠が演った「落語家の兵隊」あたりが新作らしい新作かね?
「陸軍歩兵二等卒、山下ケッタロー♪」ってやつ。
何?知らない?古い?
アタシだってオンタイムじゃない。テープで聴いたんすよ。

話がまたまた横路孝弘にずれました…いやすいません横道です。

三枝師匠。
アタシが知ってるのは、もうヤングOH!OH!からなんだけど。
創作落語の歴史は古く、S39年7月の「アイスクリン屋」から口演してるってんだから、筋金入り。
40年以上前の作品なら、ほとんど古典だよね。

S57年には、かの有名な
「ゴルフ夜明け前」(近藤勇と坂本竜馬が京都でゴルフをする噺ね。)や
「効果音の効果は効果的だったかどうか」が発表されてます。
この辺はアタシも社会人になったばかりで、何回か澤田隆二さんの「名人劇場」やラジオなんかで聴いた記憶があります。
「ゴルフ…」なんか映画にもなりました。

そんなこんなで現在三枝師匠が演じてきた創作落語は200あるそうです。
席亭三枝のいらっしゃーい亭

新作と世間言われている落語は古典に比べて鮮度が悪いのですが、
これは噺が話者のキャラクターに離れがたくくっついているからです。
三枝師匠の作った落語を弟子の方々が別な解釈で練り上げていけば、それはそれで江戸時代の新作だった古典落語と変わりなくなるのです。
本人たちがそれを望むかわわかりませんがね。

さて、
来年3月三枝師匠が何を板にかけてくるのか、
とても楽しみです。

2008/12/14 01:07 | Comments(0) | TrackBack() | 落語
この金髪豚野郎!
近頃流行りの言葉で始めましたが、
今は、金髪豚野郎になってしまった春風亭小朝師匠、
昔は「横丁の若様」って言われていたのにね。

まあ、私生活のいろんな事はともかく、
この人くらい、落語の将来を考えつつ
いろんな事を実際に仕掛けている人はいないね。

実験的な事もする。
プロデュースもする。
古典落語でも豊かな表現力を発揮する。

でも、昔、若手真打だった頃、
小朝さんがNHKの収録で「雛鍔」をやった時は、
進行をしていた談志師匠にケチョンケチョンにやられてたなあ。

確か
「こいつの落語は、黒門町や志ん朝が作り上げたものから一歩も出てない噺だ。」と酷評した後、聴衆に向って
「こいつは若くで調子に乗ってるから、こういうところで叱ってやらないとダメなんですよ。お客さん。」って言ったと思うね。

小朝さんは、
「アタシも、志ん朝師匠の噺は素晴らしいと思ってまして、そこから膨らましてやっているんですけどね。」と言っていたような。

同じく出演者だった圓楽師匠が、
「アタシたちは、彼に将来を期待しているから、厳しい事を言うわけでね。」と言ってその場は終わったんだけど、

聴いてて「オイオイ」と思った記憶があります。

アレから20年もたったかな?
談志さんも圓楽さんも、落語協会を抜け、
野球でいうメジャーである落語協会に残っているのは小朝さんだけなんだからね。

金髪豚野郎でマスコミを賑わす昨今は寂しくもあるアタシです。

小朝さんの「厩火事」は好きです。

髪結いのお崎が、亭主の非道を仲人のおじさんに愚痴りながら、
その口の端々に亭主への諦めきれない愛情を滲ませるシーンの描写は秀逸で、新聞記者が「小朝師がそこまで女性の心理を表現できるのは気味が悪い」みたいに書いていたのが印象的。

丁度その頃、フジの番組「笑ってる場合ですよ」の中で、
「小朝ホモ説」がネタになっていたせいもあったんだろう。

「子別れ」もよかったね。
これも昔NHKで聴いた。

亀吉と熊さんの実の親子と名乗れずに交わすやり取りがよかったなあ。
涙ものなんですよ。

でも、終えた後、「いい噺ですね。」とマイクを向けるアナウンサーに、
「でも、この話もう古いでしょう?そこんところがね。」と
演出に苦慮しているようなことも言っていた。

いつもいつも落語の事を考えている。
でも、彼の多趣味と才能はそれを許してくれない。
協会の理事を辞めても、
彼を中心にイベントとしての落語が回るのは間違いない。

もう、頭剃っちゃったら?

2008/11/02 11:31 | Comments(0) | TrackBack() | 落語
「落語娘」にあの人を思う
やっぱり落語はブームらしいね。 ブームそのものについては懐疑的なんだけど、 落語、それも女流の落語家をテーマにしたドラマが公開されました。 去年は貫地谷しおりさんが主演したTVドラマ「ちりとてちん」は上方落語のドラマ
今度はミムラさんの主演で映画「落語娘」が作られました。

あらすじはこうです。

「「絶対、真打になる!」と、12歳の時に落語に目覚めて以来、大学の落研で学生コンクールを総なめにしてプロの門をたたいた香須美。拾ってくれたのは奇行三昧で知られる業界の札付き・三々亭平佐だった。一度も稽古をつけてくれないばかりか、不祥事を起こしてしまって、寄席にも出入り禁止状態。そんな破天荒な師匠にTV局から、これまで演じた者が必ず命を落とすという呪われた演目「緋扇長屋」に挑む話が舞い込む…。」

すごいね、演者が必ず命を落とす呪われた落語なんて…。
聴いてみたいよね。「緋扇長屋」って噺。


「ちりとてちん」では渡瀬恒彦さんが寄席をすっぽかして廃業した?師匠徒然亭草若を演じてました。

この映画では「奇行三昧で知られる業界の札付き。一度も稽古をつけてくれないばかりか、不祥事を起こしてしまって、寄席にも出入り禁止状態」の三々亭平佐を津川雅彦さんが演じてます。

それにしても、不祥事を起こして寄席は出入り禁止。一度も稽古をつけてくれない落語家って…
すぐ思い浮かんだね。
この人が…

川柳川柳

この人の異端は半端じゃない。
さすがの落語ブームでも拾い上げてくれなかった究極の異端落語家。
大銀座落語祭に出たという話も聞かない。
まず、酒のしくじりは数知れず。
酔っ払って高座はすっぽかす。
かと思えば、呼んでもいないのにやって来て
アポなしで高座に上がり勝手にしゃべる。
早く帰りたいと平気で順番を変えてしまう。
後輩快楽亭ブラックのおごりで飲みに行くと、 酔った勢いで絡んだ相手はブラックの子供。
中でも有名なのは、忘年会で酔った勢いで師匠の家の玄関にウンコをして帰った話。
この人の師匠と言えば三遊亭圓生だから、怖いもの無し。
ケチでは業界でも有名。
「兄さん、おごってよ」
「今、金持ってねえよ。」
「…じゃあ、金出すからおごってよ。」
これは、家元立川談志がよくケチの噺のマクラでふるエピソード。
得意の演目は「ガーコン」、ジャズ落語。つーか、ほとんどそればかり。
一番得意の芸は口ラッパや口ベースといった楽器のものまね。
こんな師匠に弟子がいる。
川柳つくしさんという元OLさん。
方々で入門を断られてどんな人かも知らずに門を叩いたのがこの師匠。
あれ?「落語娘」の筋そっくりじゃん?
ただ、この人が師匠を語る。
「まず人に謝る事がない人。神にも謝らないでしょう。」。
それでいて趣味は聖書を読む事なんだという。
でも嫌いになれないのは、権力や権威にこびず、好きに生きて腹黒いところがないところなんだって。
こういう異端は、もう現れないだろうな。
なんか、この人の「緋扇長屋」が聴いてみたいよね。
ああいう人が命がけで語る落語ってどんなものなんだろう?って

2008/08/23 10:06 | Comments(0) | TrackBack() | 落語

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